【保存版】インボイスで振込手数料を売り手負担にするのはなぜ?3選の解決策を徹底解説
2023年10月から始まったインボイス制度。 経理担当者や個人事業主の間で、今最も頭を悩ませている問題の一つが「振込手数料をどちらが負担するか」という点です。
これまで商慣習として当たり前に行われてきた「売り手負担」ですが、インボイス制度下では事務作業が非常に複雑になります。 なぜ今、この問題がこれほどまでに注目されているのでしょうか?
インボイス制度への対応を誤ると、消費税の仕入税額控除が受けられなくなるリスクがあります。 また、わずか数百円の手数料のために、膨大な修正インボイスを発行する手間が発生することも珍しくありません。
この記事では、振込手数料が売り手負担になる理由や、インボイス制度における実務的な回避策をプロの視点で分かりやすく解説します。 「なぜ売り手が負担しなければならないの?」という素朴な疑問から、賢い会計処理の方法まで、明日から役立つ情報が満載です。
- インボイス制度で振込手数料の売り手負担が問題視される理由
- 振込手数料が「売り手負担」になる法的・慣習的な背景
- 売り手負担の場合の会計処理:2つのパターン
- 少額な返還インボイスの免除規定を活用する
- 買い手側が振込手数料を負担すべきケースとは?
- インボイス制度下での「代行支払」という考え方
- 振込手数料の売り手負担を巡るトラブルと回避策
- 消費税申告における振込手数料の記載ルール
- 銀行手数料を「経費」として最大活用するコツ
- 個人事業主・フリーランスが知っておくべき実務の知恵
- 売り手負担を「売上値引き」とする際の具体的な仕訳例
- 振込手数料削減のための法人向けネットバンキング活用術
- 振込手数料の売り手負担を巡るトラブルと回避策
- 消費税申告における振込手数料の記載ルール
- 銀行手数料を「経費」として最大活用するコツ
- 個人事業主・フリーランスが知っておくべき実務の知恵
- 売り手負担を「売上値引き」とする際の具体的な仕訳例
- 振込手数料削減のための法人向けネットバンキング活用術
インボイス制度で振込手数料の売り手負担が問題視される理由

なぜこれまで「売り手負担」が当たり前だったのか?
日本国内のBtoB取引においては、古くから「振込手数料は売り手(代金を受け取る側)が負担する」という慣習が存在していました。
これは、買い手が「せっかく買ってあげたのだから、送金にかかる費用くらいは引かせてほしい」という立場をとることが多かったためです。
しかし、法律(民法484条・485条)では、特約がない限り「持参債務」の原則により、債務者(買い手)が手数料を負担するのが基本とされています。
インボイス制度開始による事務負担の劇的変化
インボイス制度が始まる前は、振込手数料を差し引かれて入金されても、経理上「支払手数料」として処理するだけで済み、税務上の大きな問題にはなりませんでした。
ところが、インボイス制度下では、差し引かれた手数料を「売上値引き」として扱うか、「支払手数料」として扱うかによって、必要となる書類(適格請求書など)の種類が変わってきます。
特に、金融機関から発行される「振込手数料のインボイス」を誰が保存するのか、という点が実務上の大きな壁となっています。
消費税の仕入税額控除への影響
売り手が手数料を負担する場合、その手数料分についても適切にインボイスを管理しなければ、消費税の計算で損をしてしまいます。
例えば、330円の手数料を差し引かれた場合、その30円分の消費税を控除するためには、何らかの「証憑(しょうひょう)」が必要です。
この「たかが数百円」のために、毎月何百件もの確認作業が発生することが、多くの企業を疲弊させている原因なのです。
振込手数料が「売り手負担」になる法的・慣習的な背景
民法の原則と「特約」の優先順位
先述した通り、民法では債務者負担が原則ですが、契約書に「振込手数料は貴社(売り手)にてご負担ください」という一文があれば、それが優先されます。
多くの契約書や見積書の注釈には、いまだに売り手負担を強いる文言が含まれているのが現状です。
こうした契約がある以上、売り手は「なぜうちが?」と思いつつも、手数料を差し引かれた金額を受け入れざるを得ないのです。
銀行窓口からネットバンキングへの移行とコスト意識
かつて銀行窓口で振り込んでいた時代は、手数料も高く、買い手の負担感は相当なものでした。
現在はネットバンキングの普及により、手数料は大幅に下がりましたが、それでも「1円でも安く抑えたい」というコスト意識は根強く残っています。
特に、法人間の取引では件数が多いため、年間を通すと数十万円の差が出ることもあり、買い手側も慎重になっています。
下請法との兼ね合いにおける注意点
もし、売り手側が「下請法」の対象となる中小企業や個人事業主である場合、買い手側が一方的に「振込手数料は売り手負担」と決めることは問題になる可能性があります。
事前の合意がないまま、勝手に手数料を差し引いて支払うことは、「下請代金の減額禁止」に抵触する恐れがあるため、親事業者は注意が必要です。
このように、振込手数料の問題は単なる会計処理だけでなく、法的なリスクも孕んでいるのです。
売り手負担の場合の会計処理:2つのパターン
パターンA:支払手数料として処理する方法
入金された金額と請求額の差額を「支払手数料」として仕訳する、最も一般的な方法です。
この場合、売り手は銀行に対して手数料を支払ったわけではない(買い手が支払った)ため、銀行からのインボイスを直接入手することができません。
そのため、買い手から「振込手数料分のインボイス」を交付してもらう必要があり、これが事務作業を複雑化させる最大の要因となっています。
パターンB:売上値引きとして処理する方法(おすすめ)
差し引かれた手数料を「売上値引き」として処理する方法です。
この方法のメリットは、「少額な返還インボイスの交付義務免除」という特例が受けられる点にあります。
税込1万円未満の売上値引きであれば、返還インボイスを発行しなくても、売り手側で帳簿を保存しておくだけで仕入税額控除が認められます。
比較表:支払手数料 vs 売上値引き
| 比較項目 | 支払手数料処理 | 売上値引き処理 |
| 主な勘定科目 | 支払手数料 | 売上高(マイナス) |
| 必要な書類 | 買い手発行のインボイス | 不要(1万円未満なら) |
| 事務負担 | 非常に高い | 低い |
| 推奨されるケース | 厳密な損益管理が必要な場合 | 効率性を重視する場合 |
少額な返還インボイスの免除規定を活用する
1万円未満の「売上値引き」は書類不要
インボイス制度には、振込手数料問題に対する「救済措置」とも言える規定があります。
それは、「税込1万円未満の振込手数料を売上値引きとする場合、返還インボイスの交付は不要」というルールです。
通常の銀行振込手数料は数百円程度ですので、ほとんどのケースでこの免除規定を適用することができます。
帳簿保存だけで仕入税額控除が可能
この特例を利用すれば、売り手は「振込手数料分を値引きした」という事実を帳簿に記載するだけで、消費税の控除を受けることができます。
買い手からインボイスをもらう必要もなく、こちらから発行する必要もありません。
「1万円未満の少額な値引き」として扱うことが、現在、多くの経理現場で採用されている標準的な対応策です。
注意すべき「端数処理」と合算ルール
免除規定は「1回の取引(1枚のインボイス)」単位で判定されます。
もし1枚のインボイスに対して複数の振込手数料が発生し、その合計が1万円を超えた場合は、返還インボイスが必要になります。
もっとも、振込手数料だけで1万円を超えることはまずあり得ないため、通常の取引であればこの点は心配しなくても大丈夫でしょう。
買い手側が振込手数料を負担すべきケースとは?
契約で「買い手負担」と明記されている場合
契約書、あるいは見積書や発注書の条件に「振込手数料は貴殿の負担にてお願いいたします」とある場合は、当然ながら買い手が負担します。
もし売り手負担で振り込まれてきた場合は、不足分として翌月に請求するか、相手に是正を求めることができます。
インボイス制度開始を機に、契約内容を「買い手負担」へ切り替える企業も急増しています。
新規取引やネット通販サイトでの購入
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのECサイトや、SaaSなどのクラウドサービスでは、振込手数料は原則として購入者(買い手)負担です。
こうしたプラットフォームでは、支払金額がシステムで固定されているため、勝手に手数料を差し引くことができないからです。
効率化を求めるなら、備品購入などを積極的に楽天やAmazonに集約し、手数料交渉の手間を省くのがコスパ最強の方法です。
信頼関係を重視する長期的なパートナーシップ
売り手側が強力な技術を持っていたり、代えのきかないサービスを提供している場合、買い手側が「良好な関係を維持するため」に手数料を負担することがあります。
また、近年はコンプライアンスの観点から、大企業が優越的な地位を利用して手数料を押し付けることを避ける傾向にあります。
「どちらが負担するか」は、単なる費用の問題ではなく、企業の姿勢を示す指標にもなっているのです。
インボイス制度下での「代行支払」という考え方
売り手のために買い手が手数料を立替えたという解釈
「支払手数料」として処理する場合、理論的には「買い手が売り手のために、銀行に対して手数料を立て替えて支払った」という構成をとることができます。
これを「代行支払」と呼びますが、この場合も立て替えに関する精算書や、銀行のインボイスのコピーが必要です。
しかし、実務上、全ての送金についてコピーをやり取りするのは現実的ではありません。
媒介者交付特例の応用は可能か?
インボイス制度には「媒介者交付特例」という仕組みがありますが、これは主に代理店などを通した取引に適用されるものです。
銀行振込手数料において、買い手を「媒介者」として扱うことは困難とされています。
したがって、立替金精算書を作成する手法よりも、前述の「売上値引き」として処理する方が、遥かに簡便で推奨される方法です。
金融機関が発行するインボイスの入手方法
どうしても支払手数料として処理したい場合、買い手は銀行のATMやネットバンキングの画面からインボイス(利用証明書)をダウンロードしなければなりません。
最近では、多くの銀行がインボイス制度に対応した利用明細を発行できるようになっています。
買い手側がこの書類を適切に保存・提供できるかどうかが、運用上の鍵となります。
振込手数料の売り手負担を巡るトラブルと回避策
「勝手に差し引かれた」時の対処法
事前の合意がないにもかかわらず、入金額が手数料分少なかった場合、多くの売り手は「少額だから」と泣き寝入りしてしまいがちです。
しかし、インボイス制度が始まった今、これを放置すると経理処理上の不一致が蓄積していくことになります。
まずは、相手方の担当者に「インボイス制度への対応上、一致させる必要がある」という名目で、今後の支払い条件について再確認の連絡を入れることが重要です。
「振込手数料は貴社負担」という契約書の効力
もし契約書に明記されている場合、法的には売り手が負担する義務が生じます。
しかし、インボイス制度開始による事務コストの増大は、契約締結時には想定されていなかった「事情の変化」と言えます。
契約の更新時期などに合わせて、「事務作業の簡素化のため、今後は満額振込(買い手負担)への変更をお願いしたい」と交渉する余地は十分にあります。
交渉を円滑に進めるための「落とし所」の提案
完全な買い手負担への移行が難しい場合は、例えば「一定金額以上の取引については買い手負担、それ未満は売り手負担」といった柔軟なルールを提案するのも一つの手です。
また、支払日をまとめることで振込回数を減らし、トータルの手数料コストを下げる提案も、買い手側には喜ばれます。
単なる「拒絶」ではなく、双方のメリットになるような代替案を提示することが、プロのビジネススキルと言えるでしょう。
消費税申告における振込手数料の記載ルール
帳簿のみ保存で認められる要件の確認
1万円未満の売上値引き(振込手数料相当額)として処理する場合、帳簿には一定の事項を記載しなければなりません。
具体的には、「相手方の氏名または名称」「取引年月日」「取引内容(振込手数料相当額の値引きなど)」「支払対価の額」の4点です。
これらが正しく記載されていれば、税務調査の際も「妥当な処理」として認められますので安心してください。
簡易課税制度を選択している場合の影響
売り手側が消費税の「簡易課税制度」を選択している場合、振込手数料の処理が納税額に直接影響することはありません。
簡易課税は売上高に対して一定の率を掛けて計算するため、個別の経費(支払手数料)のインボイス保存は不要だからです。
ただし、仕訳自体は正しく行う必要があるため、実務上の管理を楽にするために「売上値引き」処理を選んでおくのが無難です。
2割特例(インボイス発行事業者激変緩和措置)の場合
免税事業者からインボイス発行事業者になった方向けの「2割特例」を適用している場合も、簡易課税と同様のことが言えます。
納税額の計算において支払手数料のインボイスは不要ですが、将来的に本則課税に移行する可能性を見据え、今のうちから正しい処理を身につけておくべきです。
インボイス制度は始まったばかりですが、初期の段階でオペレーションを固めておくことが、後々の負担軽減に直結します。
銀行手数料を「経費」として最大活用するコツ
複数の銀行口座を使い分けるメリット
ネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)は、メガバンクに比べて振込手数料が圧倒的に安く設定されています。
買い手側がこうした銀行を利用している場合、売り手も同じ銀行の口座を用意しておくことで、手数料が無料になるケースも多いです。
「同じ銀行間は手数料無料」というメリットを活かせば、売り手負担であっても実質的なコストをゼロに抑えることができます。
ポイント還元やキャッシュバック制度の活用
ビジネスカードや法人用ネットバンキングの中には、振込手数料の支払いに応じてポイントが付与されるものがあります。
また、月間の振込回数に応じて、一定回数まで手数料が無料になる優遇制度を設けている銀行も少なくありません。
こうした制度を積極的に活用することで、経理上の「支払手数料」というコストを最小化し、実質的な利益を確保することが可能です。
Amazonや楽天の法人カードでの決済移行
銀行振込ではなく、法人カード決済に移行してもらうことができれば、振込手数料の問題そのものが消滅します。
Amazonビジネスなどのプラットフォーム経由で発注してもらえば、決済はカードで行われ、手数料は発生しません。
「振込」という古い慣習から「カード決済」や「ECサイト経由」へ移行することが、令和時代の最も効率的なビジネススタイルです。
個人事業主・フリーランスが知っておくべき実務の知恵
インボイス発行事業者になるかどうかの判断基準
振込手数料の問題以前に、自分がインボイス発行事業者になるべきかどうかで迷っている方も多いでしょう。
主な取引先が一般消費者(BtoC)であれば、インボイスは不要ですが、法人(BtoB)がメインなら発行を求められる可能性が高いです。
「手数料を負担させられた上に、消費税分も値引きされる」という最悪の事態を避けるためにも、インボイス登録は前向きに検討すべき段階に来ています。
請求書に「振込手数料は買い手負担」と明記するテクニック
請求書を発行する際、振込先情報のすぐ近くに「※振込手数料は、恐れ入りますが貴社にてご負担願います。」と赤字や太字で記載しておきましょう。
これがあるだけで、無意識に差し引いて振り込む担当者への抑止力になります。
言葉で伝えるのは角が立ちますが、書類に定型文として記載しておくことで、自然に「買い手負担」を促すことができます。
クラウド会計ソフトをフル活用した自動化
FreeeやMoneyForwardといったクラウド会計ソフトを使えば、入金額の差額を自動的に「売上値引き」として処理するルールを設定できます。
一度設定してしまえば、毎月の入金確認のたびに手作業で仕訳を起こす必要がなくなります。
「1円でも正確に」よりも「いかに時間をかけずに」処理するかが、忙しいフリーランスにとっての成功の鍵です。
売り手負担を「売上値引き」とする際の具体的な仕訳例
通常入金時の仕訳(振込手数料330円を引かれた場合)
例えば、税込110,000円の請求に対し、手数料330円が引かれて109,670円が入金された場合の仕訳は以下のようになります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 普通預金 | 109,670 | 売掛金 | 110,000 |
| 売上高(値引き) | 330 | (なし) | – |
消費税区分の設定に注意
「売上値引き」として処理する場合、消費税区分は必ず「売上の対価の返還等」を選択してください。
これを間違えて「対象外」などにしてしまうと、せっかくの税額控除が受けられなくなってしまいます。
多くの会計ソフトでは、科目ごとにデフォルトの税区分を設定できるため、最初に見直しておきましょう。
相手先への通知は必要か?
この「売上値引き」処理はあくまで売り手側の内部処理ですので、相手方(買い手)にわざわざ「値引きとして処理しました」と伝える必要はありません。
ただし、将来的に価格改定などを行う際の交渉材料として、「実は毎月これだけの手数料を値引きとして負担している」という記録を持っておくことは有用です。
振込手数料削減のための法人向けネットバンキング活用術
主要銀行の手数料比較表
どの銀行をメインバンクにするかで、振込手数料の負担は大きく変わります。以下に主要な銀行の手数料傾向をまとめました。
| 銀行種別 | 同一支店宛 | 他行宛 | 備考 |
| 大手メガバンク | 0円~110円 | 165円~440円 | 利便性は高いがコスト高 |
| 地方銀行 | 0円~220円 | 330円~660円 | 地域密着だが手数料は高め |
| ネット銀行 | 無料 | 145円~165円 | 圧倒的な低コストで推奨 |
振込手数料の「無料枠」を増やす方法
多くのネット銀行では、預金残高や住宅ローンの利用状況、特定のサービス利用に応じて、他行宛振込手数料が一定回数無料になるステージ制を採用しています。
法人の場合でも、給与振込の指定口座にすることで無料枠が付与されるケースがあります。
「手数料をどちらが負担するか」で揉める前に、まずは手数料そのものをゼロに近づける努力が、無用なトラブルを防ぐ近道です。
一括振込機能(データ伝送)の利便性
支払件数が多い場合、1件ずつ振り込むのではなく、全件をCSV等でアップロードして一括振込する機能を活用しましょう。
作業時間の短縮になるだけでなく、銀行によっては一括振込の方が1件あたりの手数料が安く設定されていることもあります。
事務負担の軽減は、経理担当者の精神的な余裕にも繋がり、結果としてミスを減らすプラスの循環を生み出します。
振込手数料の売り手負担を巡るトラブルと回避策
「勝手に差し引かれた」時の対処法
事前の合意がないにもかかわらず、入金額が手数料分少なかった場合、多くの売り手は「少額だから」と泣き寝入りしてしまいがちです。
しかし、インボイス制度が始まった今、これを放置すると経理処理上の不一致が蓄積していくことになります。
まずは、相手方の担当者に「インボイス制度への対応上、一致させる必要がある」という名目で、今後の支払い条件について再確認の連絡を入れることが重要です。
「振込手数料は貴社負担」という契約書の効力
もし契約書に明記されている場合、法的には売り手が負担する義務が生じます。
しかし、インボイス制度開始による事務コストの増大は、契約締結時には想定されていなかった「事情の変化」と言えます。
契約の更新時期などに合わせて、「事務作業の簡素化のため、今後は満額振込(買い手負担)への変更をお願いしたい」と交渉する余地は十分にあります。
交渉を円滑に進めるための「落とし所」の提案
完全な買い手負担への移行が難しい場合は、例えば「一定金額以上の取引については買い手負担、それ未満は売り手負担」といった柔軟なルールを提案するのも一つの手です。
また、支払日をまとめることで振込回数を減らし、トータルの手数料コストを下げる提案も、買い手側には喜ばれます。
単なる「拒絶」ではなく、双方のメリットになるような代替案を提示することが、プロのビジネススキルと言えるでしょう。
消費税申告における振込手数料の記載ルール
帳簿のみ保存で認められる要件の確認
1万円未満の売上値引き(振込手数料相当額)として処理する場合、帳簿には一定の事項を記載しなければなりません。
具体的には、「相手方の氏名または名称」「取引年月日」「取引内容(振込手数料相当額の値引きなど)」「支払対価の額」の4点です。
これらが正しく記載されていれば、税務調査の際も「妥当な処理」として認められますので安心してください。
簡易課税制度を選択している場合の影響
売り手側が消費税の「簡易課税制度」を選択している場合、振込手数料の処理が納税額に直接影響することはありません。
簡易課税は売上高に対して一定の率を掛けて計算するため、個別の経費(支払手数料)のインボイス保存は不要だからです。
ただし、仕訳自体は正しく行う必要があるため、実務上の管理を楽にするために「売上値引き」処理を選んでおくのが無難です。
2割特例(インボイス発行事業者激変緩和措置)の場合
免税事業者からインボイス発行事業者になった方向けの「2割特例」を適用している場合も、簡易課税と同様のことが言えます。
納税額の計算において支払手数料のインボイスは不要ですが、将来的に本則課税に移行する可能性を見据え、今のうちから正しい処理を身につけておくべきです。
インボイス制度は始まったばかりですが、初期の段階でオペレーションを固めておくことが、後々の負担軽減に直結します。
銀行手数料を「経費」として最大活用するコツ
複数の銀行口座を使い分けるメリット
ネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)は、メガバンクに比べて振込手数料が圧倒的に安く設定されています。
買い手側がこうした銀行を利用している場合、売り手も同じ銀行の口座を用意しておくことで、手数料が無料になるケースも多いです。
「同じ銀行間は手数料無料」というメリットを活かせば、売り手負担であっても実質的なコストをゼロに抑えることができます。
ポイント還元やキャッシュバック制度の活用
ビジネスカードや法人用ネットバンキングの中には、振込手数料の支払いに応じてポイントが付与されるものがあります。
また、月間の振込回数に応じて、一定回数まで手数料が無料になる優遇制度を設けている銀行も少なくありません。
こうした制度を積極的に活用することで、経理上の「支払手数料」というコストを最小化し、実質的な利益を確保することが可能です。
Amazonや楽天の法人カードでの決済移行
銀行振込ではなく、法人カード決済に移行してもらうことができれば、振込手数料の問題そのものが消滅します。
Amazonビジネスなどのプラットフォーム経由で発注してもらえば、決済はカードで行われ、手数料は発生しません。
「振込」という古い慣習から「カード決済」や「ECサイト経由」へ移行することが、令和時代の最も効率的なビジネススタイルです。
個人事業主・フリーランスが知っておくべき実務の知恵
インボイス発行事業者になるかどうかの判断基準
振込手数料の問題以前に、自分がインボイス発行事業者になるべきかどうかで迷っている方も多いでしょう。
主な取引先が一般消費者(BtoC)であれば、インボイスは不要ですが、法人(BtoB)がメインなら発行を求められる可能性が高いです。
「手数料を負担させられた上に、消費税分も値引きされる」という最悪の事態を避けるためにも、インボイス登録は前向きに検討すべき段階に来ています。
請求書に「振込手数料は買い手負担」と明記するテクニック
請求書を発行する際、振込先情報のすぐ近くに「※振込手数料は、恐れ入りますが貴社にてご負担願います。」と赤字や太字で記載しておきましょう。
これがあるだけで、無意識に差し引いて振り込む担当者への抑止力になります。
言葉で伝えるのは角が立ちますが、書類に定型文として記載しておくことで、自然に「買い手負担」を促すことができます。
クラウド会計ソフトをフル活用した自動化
FreeeやMoneyForwardといったクラウド会計ソフトを使えば、入金額の差額を自動的に「売上値引き」として処理するルールを設定できます。
一度設定してしまえば、毎月の入金確認のたびに手作業で仕訳を起こす必要がなくなります。
「1円でも正確に」よりも「いかに時間をかけずに」処理するかが、忙しいフリーランスにとっての成功の鍵です。
売り手負担を「売上値引き」とする際の具体的な仕訳例
通常入金時の仕訳(振込手数料330円を引かれた場合)
例えば、税込110,000円の請求に対し、手数料330円が引かれて109,670円が入金された場合の仕訳は以下のようになります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 普通預金 | 109,670 | 売掛金 | 110,000 |
| 売上高(値引き) | 330 | (なし) | – |
消費税区分の設定に注意
「売上値引き」として処理する場合、消費税区分は必ず「売上の対価の返還等」を選択してください。
これを間違えて「対象外」などにしてしまうと、せっかくの税額控除が受けられなくなってしまいます。
多くの会計ソフトでは、科目ごとにデフォルトの税区分を設定できるため、最初に見直しておきましょう。
相手先への通知は必要か?
この「売上値引き」処理はあくまで売り手側の内部処理ですので、相手方(買い手)にわざわざ「値引きとして処理しました」と伝える必要はありません。
ただし、将来的に価格改定などを行う際の交渉材料として、「実は毎月これだけの手数料を値引きとして負担している」という記録を持っておくことは有用です。
振込手数料削減のための法人向けネットバンキング活用術
主要銀行の手数料比較表
どの銀行をメインバンクにするかで、振込手数料の負担は大きく変わります。以下に主要な銀行の手数料傾向をまとめました。
| 銀行種別 | 同一支店宛 | 他行宛 | 備考 |
| 大手メガバンク | 0円~110円 | 165円~440円 | 利便性は高いがコスト高 |
| 地方銀行 | 0円~220円 | 330円~660円 | 地域密着だが手数料は高め |
| ネット銀行 | 無料 | 145円~165円 | 圧倒的な低コストで推奨 |
振込手数料の「無料枠」を増やす方法
多くのネット銀行では、預金残高や住宅ローンの利用状況、特定のサービス利用に応じて、他行宛振込手数料が一定回数無料になるステージ制を採用しています。
法人の場合でも、給与振込の指定口座にすることで無料枠が付与されるケースがあります。
「手数料をどちらが負担するか」で揉める前に、まずは手数料そのものをゼロに近づける努力が、無用なトラブルを防ぐ近道です。
一括振込機能(データ伝送)の利便性
支払件数が多い場合、1件ずつ振り込むのではなく、全件をCSV等でアップロードして一括振込する機能を活用しましょう。
作業時間の短縮になるだけでなく、銀行によっては一括振込の方が1件あたりの手数料が安く設定されていることもあります。
事務負担の軽減は、経理担当者の精神的な余裕にも繋がり、結果としてミスを減らすプラスの循環を生み出します。

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